インプラント治療は老後に受けても大丈夫？メリット・デメリットと注意点を解説

しっかり噛めることで健康寿命の延伸が期待できる

インプラント治療を受けることで、しっかり噛めるようになり、健康寿命の延伸が期待できます。

噛む力が回復すると、食事の選択肢が広がり、必要な栄養素をバランスよく摂りやすくなります。また、咀嚼による刺激は脳の血流を促し、記憶や判断に関わる領域を活性化させることから、認知機能の維持にも良い影響を与えるとされています。

たとえば、入れ歯では噛みにくかった硬めの肉や繊維質の野菜も、インプラントならしっかり噛んで食べられるようになります。

しっかり噛めることは健康を支える基本です。インプラントは噛む力を取り戻すための有効な手段といえます。

見た目の自然さを保ちやすい

インプラントは見た目が自然で、老後でも口元の美しさを保ちやすい治療法です。

入れ歯のようにズレたり外れたりする心配が少なく、自分の歯に近い見た目を実現できます。歯ぐきとのなじみも良く、装着していても人工歯だと気づかれにくい仕上がりです。

見た目の違和感が少なく、安心して装着できることから、会話の場面で笑顔に自信を持てるようになります。

人と接する機会が多い方や、人前に出ることがある方にとって、口元の印象は大切な要素です。インプラントなら見た目に気を取られることが少なく、他人の目を気にせず、自然な笑顔で過ごせます。

取り外しのわずらわしさや食事中のズレがない

インプラントは固定式のため、入れ歯のように取り外す必要がなく、日常のストレスを大きく減らせます。

噛んだときにズレたり外れたりする心配もなく、装着時の安定感や快適さに優れています。入れ歯では食事中に浮いてしまうことがありますが、インプラントならしっかりと固定されており、硬いものでも安心して噛むことができます。

外出先や人との会話の場でも、自分の歯のような感覚で安心して過ごせるのが大きな魅力です。

持病や服薬の有無を必ず確認する

インプラント治療を受ける際は、持病や服薬の有無を事前に歯科医へと伝える必要があります。

持病の種類や薬の内容によっては、治療の進め方や術後の回復に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。

たとえば、糖尿病を抱えている方は、血糖値の管理が不十分だと感染症にかかりやすくなり、インプラントが骨と結合しにくくなる可能性があります。

また、骨粗しょう症でビスホスホネート製剤などを服用している方は、顎骨壊死のリスクがあるため、事前の医師との相談が不可欠です。

リスクを避けるには、医科との連携が取れる歯科医院を選ぶことが重要です。歯科と内科で情報を共有し、CT検査などで全身状態を確認したうえで、安全性を最優先に治療の可否を判断してもらいましょう。

骨量の不足には追加処置が必要な場合がある

骨の量が不足している場合、インプラント治療には追加処置が必要になることがあります。

高齢になると骨密度が低下し、インプラントを安定させるために十分な骨が確保できないことがあるからです。

実際に、骨が少ない部位には「骨造成」や「サイナスリフト」などの前処置を行い、骨の量を補います。

追加処置が必要になると治療期間が長くなり、費用も増えるため、事前の説明を受けたうえで納得して進めることが大切です。

術後のメンテナンスや将来的な通院を視野に入れる

インプラント治療を検討する際は、治療後のメンテナンスや、将来的にも無理なく通院できるかどうかも考慮することが重要です。

インプラントそのものは虫歯にはなりませんが、周囲の歯肉が炎症を起こす「インプラント周囲炎」のリスクがあり、定期的な診察と専門的なクリーニングが不可欠です。

とくに高齢になると、体力や運動機能の低下により、継続的な通院が困難になる可能性もあります。

そのため、治療前には、将来的にも通院が負担になりにくい場所にある歯科医院かどうか、また長期的な口腔管理に対応できる診療体制が整っているかを確認しておくことが望まれます。

定期メンテナンスが難しくなりやすい

老後にインプラント治療を受ける場合、定期的なメンテナンスが難しくなるリスクを考慮しておく必要があります。

高齢になると、体力の低下によって長距離の通院が難しくなる場合があるためです。また、免許の返納により移動手段が減ってしまうことも考えておかなければなりません。

メンテナンスを怠ると、インプラントの周囲に炎症が起きる「インプラント周囲炎」などのトラブルにつながり、せっかくのインプラントを失う原因にもなります。

長く快適にインプラントを使うためには、術後の管理まで含めて備えておく必要があります。

インプラントが不安定になりやすい

老後にインプラント治療を受けると、加齢に伴う骨の変化によって、インプラントが不安定になるリスクがあります。

年齢とともに顎の骨密度が低下し、インプラントを支える土台が弱くなることがあるからです。

インプラントがしっかり固定されず不安定になると、噛んだときにぐらつきを感じたり、痛みや違和感が生じたりすることもあります。放置すると、噛みにくさや痛みが生じ、最悪の場合は再治療が必要です。

インプラントを長く安定して使い続けるには、定期的なメンテナンスで骨の状態をチェックし、問題が見つかった場合は早めに対処することが大切です。

再治療時の身体的・経済的負担が大きい

老後にインプラント治療を受ける場合、万が一トラブルが起きると再治療の負担が大きくなります。

再手術が必要になったり、追加費用がかかったりする可能性があるからです。

たとえば、インプラントが脱落した場合やインプラント周囲炎が進行した場合、骨の再生処置を含む再手術が必要になることがあります。

高齢になると体力や免疫力が落ちているため、手術後の回復に時間がかかり、身体的な負担が増す点にも注意が必要です。

標準的なインプラント（1本埋入型）

1本ずつインプラントを埋め込む治療法（1本埋入型）は、顎の骨に十分な厚みと高さがある方であれば、高齢であっても問題なく対応できます。

1本の欠損に対して1本のインプラントを埋め込むため、噛み合わせのバランスが取りやすく、他の歯に負担をかけにくい点がメリットです。隣接する健康な歯を削る必要がなく、天然歯をできるだけ残したい方にも適しています。

ただし、複数の歯を失っている場合には、その分インプラントの本数が増えるため、治療費が高くなる傾向があります。

治療期間も長くなることがあるため、費用やスケジュールに無理のない範囲で治療を検討することが大切です。

オーバーデンチャー（インプラント義歯）

オーバーデンチャーは総入れ歯をインプラントで支える治療法です。通常は2～4本のインプラントを埋め込み、それを土台として入れ歯を固定します。

入れ歯が安定することで、食事中に外れる心配が少なくなり、会話や外食の際にも安心して過ごせるようになります。

また、取り外し式のためセルフケアがしやすく、手入れが負担になりにくいのも高齢者にとって大きなメリットです。

費用を抑えながらインプラントの安定感を得たい方には、オーバーデンチャーが現実的で効果的な選択肢といえます。

All-on-4（オールオンフォー）

All-on-4（オールオンフォー）は、4本のインプラントを顎の骨にバランスよく埋め込み、それを支えとして一体型の人工歯列（フルブリッジ）を装着するインプラント治療法です。

従来のように1本ずつインプラントを埋め込む必要がないため、外科的な負担が少なく、治療期間や費用も抑えやすいメリットがあります。

手術当日に仮歯を装着できるケースも多く、歯がない期間をほとんど設けずに日常生活を送れることも大きな魅力です。

入れ歯

入れ歯は費用を抑えて治療したい方に向いています。保険が適用されるケースが多く、治療期間も比較的短いため、手軽に始めやすいのが特徴です。

取り外しができるため清掃や手入れも簡単で、毎日のケアも無理なく続けやすいという利点があります。

一方で、装着時に違和感を覚えたり、十分に噛めなかったりすることがあり、見た目に抵抗を感じる方もいらっしゃいます。

見た目や噛む力にこだわりたい方や、日常生活でのストレスをできるだけ減らしたい方は、他の治療法も視野に入れる必要があります。

ブリッジ

ブリッジは、周囲の歯を土台にして欠損部分を補う治療法です。固定式のため装着時の違和感が少なく、見た目や噛み心地も比較的自然に近い仕上がりが得られます。

インプラントのような手術が不要で、比較的短期間で治療を終えられる点も大きなメリットです。

ただし、健康な隣接歯を削って支えにする必要があるため、支えとなる歯に継続的な負担がかかり、将来的に歯の寿命が縮むリスクもあります。

健康な歯をできるだけ残したい方には、慎重な判断が求められる治療法です。