前歯をインプラントにするメリットは?治療にかかる期間や費用相場などを紹介

奥歯のインプラントと比較して前歯のインプラントは治療が難しい傾向があり、付帯手術を伴うケースもあります。
しかし前歯は人目に付きやすく、抜けた痕跡があると笑顔が恥ずかしくなったり人と話すことに抵抗が生まれたりするため、審美的な義歯であるインプラントの埋入が一つの選択肢として提案されます。
では実際、インプラントにはほかにどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
この記事では、インプラントのメリット・デメリットや、治療期間・費用相場などの特徴を紹介します。
インプラント治療を考えている人や、他の義歯治療と比較をしたい人は参考にしてください。
前歯のインプラントは難しい?
前歯のインプラント治療は、顎の骨や歯茎が薄かったり、審美性が求められたりすることから奥歯のインプラント治療よりも難しいとされています。
骨を増やすための骨造成や歯茎を厚くするための歯肉移植が必要になるケースでは、これらの治療に対応している歯医者を選択する必要があります。
また治療後に歯茎が下がり、インプラントの一部が透けて見えることで見た目が悪くなるリスクがあるため、それを回避するための事前のシミュレーションや治療計画が重要です。
前歯はインプラントとブリッジどっちがいい?
インプラントのほかに、欠損がある部分の両隣の歯を利用して被せ物を取り付けるブリッジと呼ばれる治療法がありますが、この2つには以下の違いがあります。
インプラント | ブリッジ | |
---|---|---|
審美性 | 天然の歯に近い見た目 | 素材によって異なる |
他の歯への影響 | ほとんどない | 両隣の歯を削る必要がある |
メンテナンスのしやすさ | 天然歯と同じように歯ブラシやデンタルフロスでケアできる | ブリッジ専用の清掃道具が必要 |
寿命 | 10~15年 | 7~10年 |
費用相場 | 1本あたり30~70万円 | 保険適用:1〜2万円
自費診療:5~20万円 |
料金を重視するならブリッジ、その他の点を重視するならインプラントを選択するのがおすすめです。
インプラントはブリッジと比較すると多くの点で優れていると言えますが、ブリッジのほうがインプラントよりも治療費が抑えられます。
ブリッジは基本的にインプラントよりも審美性が劣りますが、オールセラミックやジルコニアを選択することで天然歯と同等の美しさを獲得できます。
前歯をインプラントにするメリット
前歯をインプラントにするのには、以下のメリットがあります。
審美性が高く自然な見た目に仕上がる
インプラントは自然歯に近い色調や素材で作られているため、他の人工歯と比較して審美性が高く違和感のない見た目に仕上がります。
チタンでできた人工歯根を顎の骨に埋め込み、そこに上部構造を取り付けますが、人工歯根は歯茎に隠れるため人の目には触れません。
そのため接客や人と話す機会が多い患者さんや、バレずに治療をしたい患者さんにおすすめです。
自分の歯と同じような感覚で食事ができる
インプラントは他の歯と同じように自分の顎骨から直接生えている形になるため、自然歯のような感覚で食事ができる利点があります。
硬い食べ物や粘着性のある食べ物も問題なく咀嚼でき、痛みや違和感もありません。
自分の力でものを噛むことは顎や舌のトレーニングになり、咀嚼に必要な組織の健康維持につながります。
周囲の歯への負担が少ない
インプラントは、治療の過程や取り付け後の使用において周囲の歯への影響が少なく済みます。
インプラントの手術では左右の歯を削る必要がなく、治療完了後も独立して機能するため隣の歯に負荷をかける心配がありません。
また、フラップレス手術が適用できる場合は歯茎の切開を必要としないため、傷の治りが早く痛みや出血も抑えられます。
特に前歯は人目につきやすいため、他の歯をきれいに残しつつ、隙間を違和感なく埋められるインプラントが適しています。
発音の問題が起こりにくい
インプラントは、他の歯の並びに合わせて適切な位置に設置することで発音の問題の解決が可能です。
歯の喪失によって隙間があったり、前歯の歯並びが乱れていたりすると、舌を歯に当てて発音するタ行やサ行の発音が不明瞭になる可能性があります。
インプラントを埋入し元の整った歯並びを復元することで、周囲の人の聞き取りやすさや自身の発音のしやすさにつながります。
長期的な使用が可能
インプラントは、適切にメンテナンスを行うことで10年以上使い続けられる可能性がある装置です。
一般的な義歯の寿命は、入れ歯が約5年、ブリッジが7〜10年ほどだとされていますが、インプラントは定期的なメンテナンスと適切な手入れを行うことで10年以上使用できているケースも多くあります。
メンテナンスは歯医者で受けられますが、自分でも丁寧に手入れし大切に使うように心掛けましょう。
前歯をインプラントにするデメリット
前歯をインプラントにするのには、以下のデメリットもあります。
治療費が高額になりやすい
インプラント治療は自費診療になるケースが多いため、治療費が高額になりやすいです。
インプラントは先天性の疾患や不慮の事故によってやむを得ず入れる場合には保険が適用されますが、虫歯・歯周病などの悪化や加齢による骨吸収が原因で歯を失った場合は保険が適用されません。
またインプラント治療を保険適用で受けるためには、処置を行う医療機関の条件も定められているため、ほとんどのケースで自費診療になります。
定期メンテナンスが必要
インプラントの状態を良好に保つためには、定期的なメンテナンスが必要です。
インプラントは自身で行う手入れのほかに歯医者で受けるメンテナンスが重要で、これを怠るとトラブルが発生した際に発見が遅れたり、メーカー保証を受けられなかったりします。
またインプラントは、インプラント周囲炎と呼ばれる疾患を引き起こすことでグラつきや脱落につながる恐れがあるため、定期検診が欠かせません。
そのため、通院の時間を確保するのが難しい人にとっては負担になるでしょう。
外科手術が必要になる
インプラントの埋入には、外科手術が必要になります。
基本的に歯茎の剥離や切開が必要になるため、全身疾患や服薬の影響で外科手術を受けられない人や、歯茎にメスを入れるのが怖い人などには向いていません。
処置の際は麻酔を使用しますが、術後に痛みや腫れを伴うほか、仮歯を装着している間は食べるものや歯磨きの仕方に注意が必要です。
治療に要する期間が長い
前歯のインプラントは、完全に固定されて問題なく使用できるようになるまでに時間がかかるため、不便な期間が長くなります。
問題が起こらなければ3〜4ヶ月ほどで治療が完了するケースもありますが、場合によっては骨や歯茎を増やす治療や歯周病治療を先に行う必要があります。
その際は治療期間が長くなる可能性があるため、いつまでにインプラントを入れたいという希望がある場合は早めに歯科医に相談しましょう。
前歯をインプラントにする際の注意点
前歯にインプラントを入れる際は、以下の点に注意が必要です。
治療したその日に入れられない可能性がある
前歯のインプラントは、治療したその日に上部構造(歯の見える部分)を取り付ける工程までできない可能性があるため、治療途中の期間が存在することを理解しておきましょう。
口内の状態にもよりますが、基本的にインプラント治療は2回待機期間があります。
1回目は、顎骨に人工歯根を埋め込んだ後の期間で、定着するまでに3〜6ヶ月程度の時間を要します。
この期間中は、毎月を目安に通院して傷口の経過観察が必要です。
2回目は、人工歯根と上部構造を結合させるための土台を取り付けたあとの期間で、剥離した歯茎が回復するまで1〜2週間ほど待機します。
待機期間中は傷口の保護や見た目のケアを目的として仮歯を取り付けるため、生活に支障はありませんが、実際のインプラントと比較すると耐久性が低いです。
そのため、食べるものやブラッシングの方法などの過ごし方を事前に確認しておきましょう。
骨や歯茎を増やす治療が必要になる場合がある
前歯のインプラント治療を行う際、骨や歯茎の状態によってはこれらを増やす治療が追加で必要になる可能性があります。
前歯の骨はもともと薄く、歯を失うことでさらに痩せていくため、インプラントが骨を貫通したり抜け落ちたりしないためにも事前に骨量を増やしてからでないと治療が行えません。
この治療を骨造成といい、前歯のインプラント治療では骨造成を必要とするケースが多くなりますが、痛みが強く腫れやすくなる可能性があります。
また歯茎が薄い場合、治療後に歯茎が下がって埋め込んだ部品が見えてしまうリスクがあるため、歯肉を増やす処置が必要になる場合があります。
そのためには、他の部分の歯茎を切り取って移植する処置が必要ですが、高い技術力が求められるため対応していない歯医者が多いです。
前歯のインプラントの治療期間と費用相場
前歯のインプラント治療にかかる期間と費用相場の目安は以下の通りです。
治療期間
インプラントの治療期間は、骨の造成をしない場合では3〜6ヶ月、骨の造成が必要な場合では7ヶ月〜1年ほどが目安です。
顎骨の厚みが十分あるケースでは、人工歯根の埋入から上部構造の取り付けまで3ヶ月もかからない可能性があります。
反対に骨造成の治療が必要な場合は、長い人で半年以上かかるケースがあり、そこからインプラントの治療を行うと完了までに1年以上かかる可能性もあります。
特に前歯のインプラント治療の成功のためには、事前の徹底した検査や準備をもとに治療計画を立てることが重要になるため、完成を焦らずに治療期間を過ごしましょう。
費用相場
前歯のインプラント治療にかかる費用相場の内訳は以下の通りです。
内訳 | 費用相場 |
---|---|
検査・診察 | 無料〜5万円 |
骨造成 | GBR:5〜15万
サイナスリフト:15〜30万円 |
歯肉移植 | 5~10万円 |
埋入手術 | 15~35万円 |
インプラント本体・被せ物 | 被せ物:15〜20万
土台:5〜10万 |
定期メンテナンス | 5,000円~1万円 |
インプラントの治療には検査・診察や外科手術が含まれ、骨造成や歯肉移植の有無やインプラントの素材などによって費用が異なります。
また自費診療で受けるインプラント治療は歯医者によっても料金が変わるため、事前に内訳と金額を確認することが大切です。
前歯のインプラントは奥歯よりも人目に付きやすく、審美性が求められるため、素材の関係で費用が高くなりやすいです。
しかし、安価なインプラントを選択すると不具合のリスクが高まる傾向があるため、メーカーや歯医者の信頼度を考慮して選択しましょう。
前歯のインプラント治療の手順
前歯のインプラント治療は、以下の手順で行われます。
精密検査
治療の最初に、歯周病や骨密度の検査、噛み合わせの確認などを行います。
前歯のインプラント治療は、歯周病があったり顎骨の密度が低かったりする状態では受けられない可能性が高いため、検査結果をもとに治療に適した状態にする必要があります。
特に前歯のインプラント治療は奥歯と比較して難しいため、綿密な治療計画とシミュレーションが大切です。
インプラントの埋入手術
治療計画をもとに、インプラントの埋入手術を行います。
歯茎を切開・剥離して顎骨に穴を空けたら、人工歯根を埋め込み定着するまで待ちます。
人工歯根と顎骨が固定されるまでは数ヶ月を要し、長い場合では半年ほどかかるケースもあるため、経過観察が大切です。
土台の取り付け
人工歯根が顎骨に定着したら、被せ物を結合させるための土台を取り付けます。
土台は人工歯根と被せ物を接続する役割を果たし、インプラントの安定性を高めるために必要なパーツです。
土台を取り付けた後は、歯茎が元通りになるまで1〜2週間ほど待機します。
被せ物の作成・装着
土台を取り付けた後の待機期間が終了したら、噛み合わせや適合具合をみながら被せ物の型をとり、作成を行います。
周りの歯に合わせて、色や形などを1〜2週間ほどかけて微調整をしながら制作します。
出来上がった被せ物を装着したら、治療完了です。
歯科医の指導のもと、定期的なメンテナンスでインプラントを健康に保ちましょう。
まとめ
前歯のインプラント治療について、注意点や治療期間、費用相場などを紹介しました。
前歯のインプラント治療は奥歯と比較して難しいとされていますが、経験と技術のある信頼の歯医者を選択することで審美性と機能性に優れた義歯が実現できます。
インプラントは自費診療になるケースがほとんどで、治療費が高額になりやすいですが、品質や治療の精度を重視し、適切な料金の素材・メーカーを選択することをおすすめします。
音羽歯科クリニックでは、骨の高さ・厚さが足りない場合のインプラント治療のほか、抜歯後の骨吸収を防止するソケットプリザベーションなどの治療も可能です。
また1本のみのインプラント治療はもちろん、10本以上の喪失歯の治療をインプラントを用いて行うALL-on-4(オールオンフォー)という技術にも対応しています。
手術当日から歯科技工士が作成した仮歯を入れられるため、生活に支障を及ぼさずにインプラントを入れたい人や、抜歯からのインプラント治療を検討している人は一度お気軽にご相談ください。