歯磨剤(歯磨き剤)の使い分け
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野教授和泉雄一先生の文献を参考にして話すね。
最も大切な事は、『ブラッシング』をすると言う事。これは昔も今も変わらぬ見解なのね。
和泉教授も患者さんにはブラッシング時の力加減や毛先の角度を伝え、正しいブラッシングによりプラークコントロールのレベルを引き上げる事が大切だと言っている。
最初に『歯磨剤』をすすめると磨いた気になってしっかりとしたブラッシングができない事が良くあるので、私は『歯磨剤』を付けずに磨くか、ごく少量を付けて磨く事をすすめている。
しかし『歯磨剤』には優れた機能があり、『殺菌効果』や『歯質強化』など『ブラッシング』だけでは達成できない効果がある。
『研磨剤』『発泡剤』は無配合である事。正しい『ブラッシング』ができていれば『研磨剤』は必要ないと和泉教授は、言う。研磨剤配合の『歯磨剤』を使う時は、歯が丈夫な人でも週に2~3回程度にするのが良い。
『発泡剤』が配合されている市販の『歯磨剤』は泡立つ事で磨いた気になり正しい『ブラッシング』ができないので『発泡剤』無配合が良いのね。
一般の『歯磨剤』に含まれる主な成分と作用は???
1.歯質強化作用⇒フッ化ナトリウム・モノフルオロリン酸ナトリウム
2.殺菌作用⇒クロルヘキシジングルコン酸塩液・クロルヘキシジン塩酸塩・塩化セチルピリジニウム(CPC)
3.消炎作用⇒グリチルリチン酸ジカリウム・βーグリチルリチン酸・サリチル酸メチル
4.収れん作用(引き締める事)⇒塩化ナトリウム・アラントイン
5.血行促進作用⇒塩化ナトリウム・酢酸トコフェロール(ビタミンE)
6.細胞賦活作用(元気にさせる事)⇒加水分解コンキオリン酸・塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)
7.色素付着予防⇒ポリリン酸ナトリウム・ゼオライト
(和泉雄一教授の文献参照)
歯磨剤の効果のありそうな成分はこれくらいだと思う。メーカーによってこれ以外に色々な物を入れていて箱裏の成分表を見てもどれが良いのか迷う所だと思う。
上記の内容を踏まえて歯科医院で勧めている『コンクールブランド』ウエルテック(株)の『ジェルコートF』『リペリオ』『クリーンジェル』について紹介する。
『ジェルコートF』は、フッ素入りの為う蝕・歯周病予防の普段使いに使用する。『歯質強化』『殺菌』『消炎』効果がある。
『リペリオ』は、炎症症状など重度の歯周病患者へ一時的に使う。歯肉マッサージ剤としても応用できる。『消炎』『収れん』『血行促進』『細胞賦活』の作用を持つ事から『歯肉回復』に特化していると思ってよい。
『クリーニングジェル<ソフト>』は、配合されている『サンゴパウダー』や『アパタイト』は、基本的に研磨成分なので毎日使う物でなくて歯の質を見極めた上で処方しなければならない。使用頻度を決めた上で着色除去の目的で使用するとよい。
『ジェルコートIP』は、ジェルコートFより『フッ化ナトリウム』を除いた処方でインプラントを埋入している患者さんの普段使用に使用する。フッ素がチタンインプラントを腐食し、インプラント周囲炎のリスクファクターになる言われているので『インプラント』手術をしたことのある患者さんには、フッ素無配合を勧めています。
ここで言えることは、市販の歯磨剤の効能書を見ると量の多い少ないは有るが含有成分同士で互いに拮抗し効果が失活する事も有るのだね。例えば、発泡剤が殺菌剤の効果を減弱させる事がある。研磨剤(カルシウムイオン)とフッ化物(フッ素イオン)は反応しやすく、歯質強化の効果を減弱させている可能性が高い。
だから患者さんの口腔状態をしっかりと把握している歯科衛生士の処方してもらうのが一番良いのね。
基本的には、色々な成分を配合している歯磨剤よりシンプルに効果を発揮する歯磨剤を提案する事に心がけている。
一般的なお勧めは???
1.口腔内に特別な症状が見られない場合⇒殺菌・歯質強化ができて研磨剤無配合の『ジェルコートF』でしっかり磨く事をお勧めします。研磨剤無配合の為、歯面に着色がついた時のみ研磨剤配合の『クリーニングジェル<ソフト>』を使って着色を除去すると良い。
2.歯肉炎がみられる場合⇒消炎作用を期待して『リペリオ』を使う。炎症部位に『リペリオ』を塗布するのも良い。炎症の原因は細菌なので細菌を抑制する為に細菌剤の入った『ジェルコートF』も併用し炎症が治まれば1.の基本使いに戻す。
3.朝は『リペリオ』夜は『ジェルコートF』など1日2種類を使い分けると良いのね。
インプラント埋入症例の場合⇒『ジェルコートF』を『ジェルコートIP』に換えるほかは基本使いと同じなのね。
まあ、疑問に思ったら気楽に音羽スタッフにお声を掛けて下さいね☆彡