インプラントの寿命はどれくらい?劣化の原因や破損時の対処、長持ちのコツを紹介

インプラントは、入れ歯やブリッジと比較して寿命が長いとされていますが、長期間使い続けるためには適切なメンテナンスや劣化のリスク要因を改善することが必要です。
治療が完了したら無条件で長持ちする装置ではなく、劣化した状態で使い続けることで口内の健康に影響を及ぼすケースもあるため、正しい対処法やケアの方法を理解しておきましょう。
この記事では、インプラントは通常どのくらいの期間使用できるのかや、破損した場合の対処法、長持ちさせるためのポイントなどを紹介します。
インプラント治療を検討している人は、事前準備のためにぜひ参考にしてください。
インプラントの平均寿命はどれくらい?
インプラントの平均寿命は10〜15年とされていて、正しい手入れと定期的なメンテナンスによって入れ歯やブリッジより長く使い続けられる可能性があります。
インプラントの平均寿命 | ブリッジの平均寿命 | 入れ歯の平均寿命 |
---|---|---|
10~15年 | 7~8年 | 4~5年 |
インプラントは、治療を受けた人のおよそ90%以上が10~15年使い続けられていると言われており、抜歯してすぐの埋入手術や骨移植を行ったケースでも90%前後の人が同じ期間使用できる見込みがあるとされています。
ブリッジは、欠損した歯の両隣を削って土台にすることで、連結した人工歯を橋掛けのように取り付ける方法で、土台となる歯の健康状態によって寿命に大きな差が生じます。
一般的なブリッジの寿命は7〜8年とされていますが、土台は健康な歯を削って作るため虫歯や歯周病になりやすく、それが原因で歯の寿命に影響を及ぼす可能性が高いです。
入れ歯は、日常的に使用することですり減ったり素材が劣化したりしやすく、加齢や顎骨の変化によって着け心地が変化する可能性があるため、調整や作り直しが必要になるケースがあります。
インプラントが劣化する原因
インプラントが劣化するのには、以下の原因が考えられます。
細菌感染を起こしている
インプラントが細菌感染を引き起こすと、インプラント周囲炎と呼ばれる炎症が発生し寿命を縮める原因になります。
インプラント周囲炎ではインプラントが歯周病のような状態になるため、悪化することで安定感が失われたり、抜け落ちたりする可能性があります。
定期的なメンテナンスや口腔ケアによって歯石の蓄積を予防することが大切です。
治療した歯科医の技術不足
インプラントの寿命には、治療を行った歯科医の技術が影響する可能性があるため、信頼できる歯科医を選択しましょう。
インプラントの治療を成功させるためには、骨造成や歯肉移植の処置や噛み合わせの調節を適切に行うことが大切です。
外科手術の技術だけではなく、インプラント以外の知識が豊富であることも重要なため、学会や研修会で知識や技術の研鑽を行っているかどうかも判断材料として有効です。
また、治療を受ける歯医者の症例数や設備にも注目しましょう。
インプラント治療の成功例が豊富だったり、必要な検査や処置を行うための設備が充実していたりするかを確認することが推奨されます。
メンテナンスが不十分
インプラントは、メンテナンスが不十分だとトラブルのリスクが高まります。
インプラントを長く使用するためには、歯医者で受ける定期メンテナンスと自分で行うケアが重要です。
特にインプラント周囲炎の原因になる歯石は自分では除去できず、歯医者でクリーニングを受ける必要があります。
定期的にメンテナンスを受けることで、トラブルが起こる前に異常に気付ける可能性が高まります。
喫煙習慣がある
喫煙習慣は、インプラントの寿命に大きく影響を及ぼします。
喫煙は治療部分周辺の組織の血流を悪化させ栄養供給を妨げるため、インプラントの人工歯根と顎骨の結合を遅らせる可能性があります。
また傷口の治癒速度に影響し、細菌感染のリスク上昇の原因にもなるため、喫煙している状態の人はインプラントの治療自体を受けられないケースが多いです。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある
歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに負荷をかけることで寿命を縮める恐れがあります。
人の歯には歯根膜と呼ばれる組織が存在し、噛みしめた際にかかる力を吸収するクッションのような役割を果たしますが、インプラントには歯根膜がないため、衝撃が分散されず負荷が大きくなります。
また歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラント治療中の人工歯根と顎骨の定着にも影響を及ぼすため、適切な対策が必要です。
インプラントの質が低い
インプラントが早く劣化する原因として、元々のインプラントの質が悪い点が挙げられるため、品質を考慮して選択することが大切です。
インプラントを取り扱うメーカーは多数存在し、製品の質もそれぞれ異なります。
治療する人の知識や技術の有無を見極めるだけではなく、高品質のインプラントを選択することも重要です。
劣化したインプラントを使い続けるとどうなる?
劣化したインプラントを使い続けると、以下のトラブルにつながる恐れがあります。
痛みを伴う
インプラントのぐらつきや周辺組織の炎症を放置すると、痛みを伴うリスクがあります。
原因としては、インプラント周囲炎や噛み合わせの不適合、装置のネジの緩みなどが考えられ、適切に対処することで改善される可能性があります。
インプラントの痛みは食事や会話に影響を及ぼし、日常生活が不便になるケースもあるため早めに歯医者を受診しましょう。
インプラントが抜け落ちる
劣化したインプラントを長期間使用したり、インプラント周囲炎を放置したりすると、人工歯根と顎骨の結合が徐々に弱まり、抜け落ちる原因になります。
インプラントは使い方次第で長く使える見込みがある装置ですが、寿命を過ぎて使い続けると安定性が低下し、脱落を引き起こします。
また重度のインプラント周囲炎もインプラントが抜け落ちる原因になり、損傷が悪化することで再治療の選択肢が限られるケースも懸念されるため、注意が必要です。
再治療が難しくなる
インプラントを不適切な状態で長期間使い続けると、再治療が難しくなる可能性があります。
寿命を過ぎたインプラントや炎症を起こした状態のインプラントを放置すると、顎骨の健康が損なわれたり、骨が溶けたりするため、再治療の際に骨移植や骨造成が必要になる場合があります。
ケースによっては再治療が不可能になる可能性もあるため、定期的に状態をチェックすることが大切です。
周囲の歯に悪影響を及ぼす
インプラントに起きたトラブルを放置すると、周囲の健康な歯に悪影響を及ぼすリスクが発生します。
不安定な状態でそのままにしておくと、隣の歯に負荷をかけたり、損傷を与えたりする可能性があります。
またインプラント周囲炎は周囲の歯や組織に感染を拡大させ、健康な部分にも歯肉炎や歯周病が発生する危険があるため、早めの対処が大切です。
噛み合わせが乱れる
インプラント本体の不具合や被せ物の損傷がある状態で使い続けると、噛み合わせが乱れる可能性があります。
不安定になったインプラントを放置すると、隣の歯に負荷をかけることで歯並びに影響を及ぼし、顎関節へのストレスからくる顎関節症や頭痛、肩・首の痛みを引き起こすリスクがあります。
噛み合わせが乱れると食べ物を上手く噛めなくなり、消化効率の低下にもつながる恐れがあるため、メンテナンス時に噛み合わせのチェックをしてもらいましょう。
インプラントが寿命を迎えた場合の対処法
寿命を迎えたインプラントは無理に使い続けずに、以下の対処を行いましょう。
修理や交換を行う
被せ物が欠けたり摩耗したりした場合は、その部分だけを修理・交換できます。
人工歯根に不具合がなければ、被せ物の問題を改善するだけで着け心地や使い心地が元に戻るケースが多いです。
メーカーが定めた保証期間内であれば追加費用なしで修理できる可能性があるため、早めにトラブルに気付けるように注意しましょう。
再手術を受ける
インプラント全体に問題が発生した場合や、インプラント周囲炎によって抜け落ちた場合は、再手術が必要です。
インプラントの再手術は有償のケースと無償のケースがありますが、過失がなく適切なケアをしながら長く使用した場合でも、保証期間を過ぎていれば全額自己負担になります。
保証期間内の場合も適用条件があるため、事前に必ず確認し、守るように努めましょう。
インプラントのメーカー保証とは
インプラントのメーカー保証とは、定められた期間内にインプラントに破損・脱落などのトラブルが起こった際、無償で再治療が受けられる保証のことです。
一般的には、以下の条件を満たすことで適用されます。
- 保証期間内である
- 歯医者で定期メンテナンスを受けている
- 故意ではない破損・脱落である
- 歯科医の指示を守っている
インプラントのメーカー保証を受けるためには、これらの条件を満たしている必要があり、定期メンテナンスを怠っていた場合や、故意や不注意による破損や脱落の場合は保証の対象外です。
また歯科医の指示に従っているかも重要なポイントで、禁煙の指示に従わなかったことで発生したトラブルの場合は保証を受けられません。
保証期間は、メーカーによって部品ごとに定めているケースもあるため、事前に内容をよく確認しておくことが大切です。
インプラントを長持ちさせるために
インプラントを長く使用するためには、以下の点に注意しましょう。
メンテナンスを怠らない
インプラントの治療を受けた後は、歯医者での定期メンテナンスを怠らないようにしましょう。
自身で行うセルフケアも大切ですが、インプラントを長持ちさせるためには、顎骨の状態やインプラント周囲炎の有無など、自分の目で見てもわからない部分の観察や歯石の定期的なクリーニングが大切です。
さらにインプラントには保証期間が定められていて、期間内であればトラブルが起こった際に無償で対応してもらえますが、メンテナンスを受けていない場合は保証を受けられません。
効果的なメンテナンスの頻度は個人によって異なりますが、口内の健康状態が安定することで通院回数が減る可能性もあるため、歯科医の指示に従って通うことが大切です。
禁煙する
インプラントを長く使用するためには、禁煙を強く勧めます。
喫煙はインプラントの寿命に影響を及ぼすだけではなく、口内の健康を損なう原因にもなります。
治療の前後で禁煙をできない場合は、インプラントを入れられない可能性があります。また、治療後も禁煙を続けるのが理想的です。
禁煙が難しい場合は、本数を減らす工夫をして少しでもインプラントを長く使えるように努めましょう。
歯ぎしり・食いしばりの対策をする
インプラントの不具合を予防するために、歯ぎしりや食いしばりの治療・対策をしましょう。
インプラントには咀嚼するうえで十分な強度がありますが、天然歯と比較すると物理的な負荷への耐久性は低いです。
強い歯ぎしりや食いしばりがあると無意識のうちに顎骨やインプラント、健康な他の歯に影響を及ぼすため、歯科医に相談して治療やマウスピースの装着などの対策を行いましょう。
噛み合わせの治療を行う
噛み合わせが悪い状態で放置するとインプラントの寿命を縮める原因になるため、必要に応じて矯正治療を行いましょう。
インプラントを埋入した際に問題がなくても、時間の経過とともに噛み合わせが少しずつずれる場合があります。
そのままインプラントを使い続けると、インプラントに余分な負荷がかかりトラブルを引き起こす可能性が懸念されるため、定期的に噛み合わせのチェックを受け、適切に対処することが大切です。
適切な方法でセルフケアを行う
インプラントを長持ちさせるためには、歯医者での定期的なクリーニングのほかに、自身でも適切にケアを行いましょう。
インプラントは適切にケアしないと汚れが溜まりやすく、インプラント周囲炎になると歯茎や顎骨にも影響するため、通常の歯ブラシのほか必要に応じて歯間ブラシやデンタルフロスなどを活用することをおすすめします。
歯医者での定期メンテナンスでは、効果的なブラッシングの方法を指導してもらえるため、磨き残しやすい部分をしっかり磨くコツを身につけることが大切です。
信頼できるインプラントメーカーを選択する
インプラント治療を受ける際は、インプラントの質やメーカーの信頼度などを考慮して選択しましょう。
良質なインプラントであれば顎の骨としっかり結合し、トラブルのリスクも減少しますが、いわゆる格安インプラントのような安全性が十分ではない可能性が高い製品も存在します。
安価なインプラントのすべてが低品質である、または高価なインプラントであれば安心できるとは言い切れませんが、実績や臨床データに基づいて選択することが大切です。
まとめ
インプラントは自分の天然の歯のように使えることが魅力ですが、適切なケアを怠ると寿命を縮めてしまうことになります。
しかし、丁寧なセルフケアと歯科医院での定期メンテナンスを続ければ、インプラントは長く使い続けることも可能です。
劣化したインプラントを放置するとさまざまなトラブルを引き起こすリスクがあるため、インプラントの状態を正しく把握するためにも定期メンテナンスを怠らないように心掛けましょう。
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