伝馬町横内包括支援センター会議
今回
ケアマネージャー様から相談をうけたA様、B様についてコメンテーターとして出席しました。
A様(88歳女性)
私が気になった点
- 独居だが意欲は保たれている
- 硬膜下血腫手術3回の既往
- 圧迫骨折歴あり
- 最近も転倒を繰り返している
- 朝から動けない日が増えている
- 趣味だった唄をやめてしまった
- ヘルストロンに乗ってから動き出す生活
この方は認知症というより、
フレイル(虚弱)とサルコペニアの進行
が心配です。
歯科医師としてのコメント
「転倒が続いている背景に、栄養状態や口腔機能の低下が隠れていないか確認したい。」
「食事内容に気を付けていても、噛む力が落ちると蛋白質摂取量が不足しやすい。」
「体重変化、咀嚼力、義歯の状態を確認しながらフレイル予防につなげたい。」
また、
「好きだった歌をやめたことは活動量や社会参加低下のサインかもしれない。」
というコメントをした。
B様(65歳女性・てんかん)
この事例のポイント
実はこの方の問題は「てんかん」そのものより
障害福祉サービスから介護保険サービスへ移行することへの不安
です。
資料にも
- 集団行動が苦手
- 劣等感がある
- 孤立予防が必要
- 通所先が見つからないことが不安
と書かれています。
歯科医師としてのコメント
私はこの事例では
「無理にサービスへ当てはめない」方が良い気がします。
例えば
「生活リズムは保たれており、服薬管理もできている。」
「本人の自己決定を尊重しながら居場所づくりを考えることが重要。」
「デイサービスに通わせることが目的ではなく、安心して地域生活を継続できることが目的。」
だと思います。
私は訪問歯科で多くの高齢者やご家族を見てきているので
- 本人の意欲
- 食べる力
- 人とのつながり
- 転倒後の生活の変化
- 孤立予防
を考えたらよいと思います。
『結論』
A様(88歳)
私なら
「まだ自分で料理をされ、教会にも通われています。できなくなったことより、今できていることを維持する支援が大切だと思います。」
B様(65歳)
こちらは
「サービス利用が目的ではなく、安心して生活できる居場所を見つけることが目的だと思います。」
★硬膜下血腫について考察してみる
硬膜下血腫とは
脳は頭蓋骨の中で3枚の膜に包まれています。
脳の外側から順に
- 硬膜
- くも膜
- 軟膜
があります。
このうち、
硬膜と脳の間に血液がたまる状態
を硬膜下血腫といいます。
慢性硬膜下血腫
A様のような高齢者で最も多いタイプです。
転倒や頭部打撲の
- 数週間
- 1〜2か月後
に症状が出ることがあります。
ご本人も家族も転んだことを忘れている場合があります。
症状
高齢者では認知症と間違われることがあります。
- 歩行障害
- 転倒しやすくなる
- 片側の手足が動かしにくい
- 物忘れ
- 反応が鈍くなる
- 頭痛
- 尿失禁
などです。
A様の
- 右肩の痛み
- 右腕が肩までしか上がらない
というのは、後遺症として残っている可能性があります。
なぜ3回も手術したのか
慢性硬膜下血腫は、
一度手術しても
10〜20%程度で再発
します。
高齢者ではさらに再発しやすく、
- 血液サラサラの薬
- 脳萎縮
- 転倒
などがあると再発率が上がります。
そのためA様は
「3回手術した」
という経過になったのでしょう。
ケア会議での視点
「硬膜下血腫の既往があり、その後も転倒が続いているため、身体機能の低下だけでなく再度の頭部外傷にも注意が必要と思います。」
さらに
「転倒予防とともに、栄養状態や口腔機能の維持によるフレイル予防も大切だと思います。」
A様の資料を読むと、私が一番気になったのは認知症よりも、
『転倒を繰り返していること』
『朝から動けなくなってきたこと』
『趣味の歌をやめたこと』
です。
これらはフレイル進行のサインにも見えますので、「食べる力」「口腔機能」の視点は非常に価値があると思います。
★傷害福祉サービスと介護保険サービスの違いを考察してみる
障害福祉サービス
対象は主に
- 身体障害
- 知的障害
- 精神障害
- 発達障害
- 難病
を持つ方です。
目的は
「障害があっても地域で自立した生活を送ること」
です。
例えば
- 就労支援
- 生活介護
- 地域活動支援センター
- 居宅介護(ヘルパー)
- グループホーム
などがあります。
B様は
- てんかん
- 精神遅滞(療育手帳B1)
があり、20年以上障害者センターに通っていたようです。
介護保険サービス
対象は
- 65歳以上
- または特定疾病の40~64歳
です。
目的は
「加齢による心身機能低下を支えること」
です。
例えば
- デイサービス
- デイケア
- 訪問介護
- 福祉用具
- ショートステイ
などがあります。
B様が悩んでいる理由
65歳になり、
障害福祉サービス中心の生活から
介護保険サービス中心へ移行する時期になっています。
しかし、
障害福祉サービスは
- 顔なじみの利用者
- 障害への理解がある職員
- 長年慣れた環境
があります。
一方で介護保険のデイサービスは
- 高齢者中心
- 初めての人ばかり
- 集団活動が多い
ため、
B様にとっては大きな不安になります。
資料にある
「新しい居場所探しに迷う」
とはまさにこのことです。
会議で言えるコメント
「介護保険への移行は制度上必要ですが、本人にとっては20年以上続いた生活環境が変わることになります。不安が強いのは当然であり、まずは安心して通える場所を探すことが大切だと思います。」
また、
「病気や障害だけでなく、長年築いてきた生活習慣や人間関係を大切にしながら移行を考える必要があると思います。」
B様の事例は「てんかんの人」ではなく、
『65歳になり、慣れ親しんだ居場所を失う不安を抱えている人』
として見ると、本質がよく見えてくると思います。

