認知症と家族の会 高齢者の栄養指導シリ-ズ⑨
音羽歯科クリニックでの栄養指導や訪問歯科診療でも役立つように、「口腔機能と栄養」の関係を整理してみました。
『口腔機能と栄養』
1. 口は「栄養の入り口」
健康は「食べること」から始まります。
口腔機能が低下すると、
- 噛めない
- 飲み込みにくい
- むせる
- 食事が楽しくない
という状態になり、栄養不足につながります。
つまり
口腔機能低下 → 栄養不足 → 筋力低下 → 要介護
という悪循環が起こります。
2. 口腔機能とは
① 咀嚼(そしゃく)
- 食べ物を細かく砕く
- 唾液と混ぜる
② 嚥下(えんげ)
- 安全に飲み込む
③ 唾液分泌
- 消化を助ける
- 虫歯・歯周病予防
- 飲み込みを助ける
④ 舌・口唇・頬の動き
- 食べ物をまとめる
- 飲み込みやすくする
- 発音を助ける
3. 口腔機能が低下すると
噛みにくくなると
避ける食品
- 肉
- 魚
- 野菜
- 海藻
- 果物
食べやすい食品
- パン
- 麺
- お菓子
- ご飯だけ
となり、
炭水化物中心の食事になります。
結果として
- タンパク質不足
- ビタミン不足
- ミネラル不足
- 食物繊維不足
になります。
4. 栄養不足で起こること
サルコペニア
筋肉量が減る
↓
噛む筋肉
舌の筋肉
飲み込む筋肉
も弱くなります。
さらに
食べられない
↓
もっと筋肉が減る
という悪循環になります。
5. 低栄養のサイン
- 体重減少
- 疲れやすい
- 食欲がない
- むせる
- 口が乾く
- 義歯が合わなくなった
- 筋力低下
これらは要注意です。
6. 高齢者に必要な栄養
① タンパク質
筋肉を作る
目安
体重1kgあたり1.0~1.2g
筋肉を増やしたい場合は
1.2~1.5g
食品
- 卵
- 納豆
- 牛乳
- ヨーグルト
- チーズ
- 魚
- 肉
- 大豆
② カルシウム
歯や骨を守る
食品
- 牛乳
- チーズ
- ヨーグルト
- 小魚
③ ビタミンD
カルシウム吸収
筋肉維持
食品
- 鮭
- サバ
- イワシ
- キノコ
日光浴も重要です。
④ ビタミンB群
食欲維持
エネルギー産生
食品
- 豚肉
- レバー
- 納豆
⑤ 食物繊維
腸内環境改善
便秘予防
食品
- 野菜
- 海藻
- きのこ
7. 歯科医院でできる栄養指導
患者さんへ
「何を食べていますか?」
だけではなく
- 最近体重は減っていませんか?
- 肉や魚は食べられますか?
- むせませんか?
- 食事時間は長くなっていませんか?
- 水分は十分取れていますか?
と聞くことで、低栄養の早期発見につながります。
8. 口腔機能を維持する方法
- よく噛む(1口30回を目安に)
- 毎日口腔ケア
- 義歯調整
- あいうべ体操
- パタカラ体操
- 唾液腺マッサージ
- 十分な水分補給
- 毎日のタンパク質摂取
- 毎日の散歩や筋力トレーニング
9. 歯科医師・歯科衛生士の役割
歯科は虫歯や歯周病を治すだけではありません。
- 噛める口を守る
- 飲み込める口を守る
- 栄養状態を守る
- 筋肉を守る
- フレイルを予防する
- 健康寿命を延ばす
ことが大切な役割です。
まとめ
「口から食べること」は健康長寿の基本です。
口腔機能が維持されることで、十分な栄養が摂れ、筋肉や免疫力が保たれ、フレイルやサルコペニアの予防につながります。歯科医師・歯科衛生士は『食べる力』を支える専門職として、口腔機能と栄養の両面から患者さんを支えることが重要です。
これらを一つの流れで説明すると、患者さんやご家族にも非常に分かりやすくなります。
「健康は口から始まります。」
噛める口があるから栄養が摂れます。
栄養が摂れるから筋肉が保てます。
筋肉が保てるからしっかり歩けます。
よく歩き、人と話し、外出することで認知症の予防にもつながります。
つまり、**『口を守ることは全身の健康を守ること』**なのです。

