認知症と家族の会 脳出血後、半身麻痺
脳出血からの復帰で右半麻痺に成ったが麻痺側の指がグーに成るのは何故と聞かれたが
脳出血後の右半麻痺で、麻痺側の手指が「グー」のように握り込んでしまうのはよくみられる症状です。主な原因は**痙縮(けいしゅく)**です。
脳出血で脳から手や指へ送られる運動の指令経路が障害されると、単に力が入らなくなるだけでなく、筋肉の緊張を適切に抑える働きも低下します。その結果、手では特に指を曲げる筋肉(屈筋)が過剰に緊張しやすくなり、「手首が曲がる・親指が内側に入る・指が握り込む」という姿勢になりやすいのです。
「脳から手に『力を抜いて指を伸ばしなさい』という指令がうまく届かなくなっています。そのため、指を曲げる筋肉の力が勝ってしまい、自然にグーの形になってしまうんです。自分で力を入れて握っているわけではありません。」
41歳と若く、脳出血からの復帰過程ということですので、「グーになる=もう指が動かない」という意味ではありません。 リハビリによる改善の可能性があります。ただし痙縮が長期間強いと、筋肉や腱、関節そのものが硬くなる拘縮につながるため、手指を開く訓練、ストレッチ、装具、必要に応じてボツリヌス療法などが検討されます。
なお、ゆっくり指を開こうとすると開くが、速く伸ばすと強く抵抗するなら痙縮らしい所見です。一方、すでにゆっくり動かしても指がほとんど開かない場合は拘縮も考えます。
なぜ「手はグー、足は突っ張る」のか
脳出血などで大脳から脊髄へ下る運動経路が障害されると、筋肉を動かす力だけでなく、筋肉の緊張を抑えるブレーキも効きにくくなります。これが痙縮の大きな背景です。
典型的な片麻痺では、
上肢 → 屈曲優位
「肩が内側に入る → 肘が曲がる → 手首が曲がる → 指が握り込む(グー)」
一方、
下肢 → 伸展優位
「股関節・膝が伸びる → 足首が下を向く → 足が内側に入りやすい」
というパターンになりやすいです。
つまり今回の質問の「右手の指がグーになる」のも、単純に「指を伸ばす筋肉が麻痺した」だけではなく、脳からの抑制が弱くなり、指を曲げる筋肉の緊張が強くなっていると考えると分かりやすいです。
相談者への説明なら
「脳から筋肉への命令には、動かす命令だけでなく、力を抜かせる命令もあります。脳出血のあと、その“力を抜かせる命令”がうまく届かなくなって、指を曲げる筋肉が勝ってしまうので、手がグーになりやすいんですよ。」
さらに大切なのは、痙縮と拘縮は別物という点です。
痙縮なら、ゆっくり他人が指を伸ばすとある程度開けます。しかし長期間グーの状態が続いて筋肉・腱・関節が実際に短く硬くなると、これは拘縮です。ですから早期からリハビリで「開く・伸ばす」動きを維持することが重要になります。
認知症のご両親を介護中と聞きました。ご本人の手足のリハビリを続けながらの介護は頑張りすぎずに仲間と一緒に頑張りましょう。
(補足)
発症1年以内であれば、無理に指を開かせるのではなく、**「ゆっくり伸ばす → 自分で開く → つかんで離す」**を繰り返すのが基本です。リハビリ担当のPT・OTの方針がある場合は、それを優先してください。
1日5分くらいの手指練習
- まず力を抜く:1分
右腕を机やクッションの上に楽に置きます。肩から力を抜いて、ゆっくり呼吸します。痙縮は緊張すると強くなりやすいので、最初から無理に指を開こうとしません。 - ゆっくり手を開く:1分
左手で右手の親指から順番に、ゆっくり指を伸ばします。痛みが出るところまでは行いません。ポイントは**「グイッと開かない」**ことです。急に伸ばすとかえって痙縮が強くなることがあります。 - 手首もゆっくり起こす:1分
指だけでなく、曲がっている手首もゆっくり起こします。手首が曲がったままだと指も握り込みやすいためです。 - 自分の力で「パー」:1分
完全に開かなくても構いません。「パーにしよう」と意識して何回か繰り返します。少しでも自分で動かすことに意味があります。 - つかむ→離す:1分
タオル、スポンジ、柔らかいボールなどを軽く握り、今度は**「離す」ことを意識**します。強く握る訓練ばかりにしないことが大切です。
特に「握る」より「開く・離す」動作を大切にすると覚えておくとよいでしょう。
右手について ①自力で少しでもパーができるか、②左手で右指をゆっくり伸ばせば開くか、③手首を反らせることができるか を見てみてください。この3点が分かると、現在の状態をもう少し具体的に考えられます。
なお、強い痛みが出る、肩が痛い、指がまったく開かない、皮膚に爪が食い込むほど握り込む場合は、自己流で強く伸ばさず、リハビリ科・OTに相談するのが安全です。

